- 「東京4」
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2022.09.13
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~真夏の夜の出来事~
真夜中に不吉な予感で突然目覚めた私は思わずベッドから飛び起きた。「ダーリンとおばちゃんに危険が迫っているわ‥助けなきゃ!」
私の名前はローラ。普段はどこにでもいるアニメ好きの少女のふりをしているけど、その正体は世の中にはびこる悪を退治するスーパー女戦士「エスパー・ローラ」なのだ。
目をつぶってダーリンとおばちゃんの居場所を頭の中で検索する。すぐにヒットした場所は、やはりおばちゃんの食堂だった。それからテレパシーで仲間と交信し、あるとっておきのマシーンを部屋の机の引き出しに送ってもらう。
「どこでもドア~!」(パクってスミマセーン)
次の瞬間、私は薄暗い店内にいた。人の気配はなかったが、小さな緑色の光がポツリと空中をせわしなく彷徨っている。「えっ・?! もしかして‥ホタル?」すぐに店内の電気をつけるとその飛行物体は私のそばにやってきてテーブルに着地した。しかも立ったまま―こちらに何か話しかけているようだ。「ま、まさか・・。おばちゃん・・?!おばちゃんなの?」ホタルが悲しそうに頷く。「そうなのね、悪魔に姿を変えられてしまったのね・・。遅かったか・・。で、でも、大丈夫よ!私が何とかして元に戻してあげるから」すぐさま私は呪文を唱えて、あるかぎりのパワーを人差し指に溜め、そっとホタルに触れた。すると眩しい光の輪が広がりその中からおばちゃんが出てきた。
「よかった!おばちゃん、大丈夫?お尻・・熱かったでしょ?やけどしてない?」おばさんは私に抱きつき涙ながらに大きく頷くので、私も思わずもらい泣きしてしまい「本当によかったわ~!」とふたりで喜びあった。
すると、そこへさらに別の飛行物体が現れた。「今度は何なの?」「えっ・・?!」「まさか・・」
「ぎぎゃーーーーっっ!!! ゴキブリっ!」
「飛ぶんじゃないの、せめて床を這って!ゴキブリが空中を飛ぶのは反則よっ。いや、存在そのものが反則だわ。あっ‥そうかっ!ついに姿を見せたのね。この悪魔めっ!これでも食らいなさーい!」私はテーブルにあったスポーツ新聞を棒状にしてGめがけて振り抜いた。
「バシっ!!」
見事にクリーンヒット! Gあえなく、墜落‥したのは何と‥おばちゃんの靴の上だった。
「ぎぎゃーーーっっ!!!」とおばちゃん。しかも、まだ動いているG‥。何という生命力。
「おばちゃん、動いちゃだめよ!トドメを刺すからね、じっとしててねっ!」
「な、なに言ってるの!そんなのダメよ、絶対やめてーっ!!」
「おねがい!おばちゃーん、ガマンして―っ!」と私が振り上げた新聞をおばちゃんが奪い取って叫んだ!「ダメだって!このGちゃんはね‥息子なの!悪魔に姿を変えられた私の息子なのよ!」
「え、えぇーーっ?!おじーちゃんが息子なの?」「バカっ! 息子よっ!!」「えっ、バカ息子?」「ちがーうって! 私の息子であなたの彼氏!」
「オーマイガーっ!」「ダーリン・・お願い死なないで―っ!」
「何とかしなきゃ」私はふたたび呪文を唱え人差し指にパワーを溜めて‥そっとGに触れ‥れるわけないじゃーん!!「ムリムリ‥出来なーい!」
「ど、どうしよう?」と焦ってあたりをキョロキョロ見回しているとテーブルの箸立が目に留まる。すかさず中から割り箸を抜き取った私は魔法のスティック代わりにそれをGに当ててパワーを送る。すると割り箸がメラメラと燃え、真っ赤な炎の中から金ピカ衣装を着たダーリンが「ジャジャーン!」というドラの音と共に両手を広げて登場した。
「サンキュー!エブリバディ! It’s a magic show!!」
「ブラボーーっ!!」と叫んだ私はそこで目が覚めた。「あ~楽しい夢だった。さて、起きよっと。ベッドから立ち上がった時、頭の中に仲間からのテレパシーメッセージが届いた。
「どこでもドア、ちゃんと返してね」
「えっ‥?! 夢じゃなかった‥の?」
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「どう? すごくおもしろい話でしょ?」
「何で、僕がゴキブリなんだよーっ!それにバカ息子って‥言いたい放題じゃん‥」
「まあまあ・・いいじゃない。最後はかっこよく登場したんだから!」
「じゃあ、また電話するね。おやすみなさい」
プサンに住む彼女はこんな風にときどきオリジナルの物語をラインで送っては電話をくれる。ストーリーはもちろんだが毎回登場する僕の役どころに興味津々だ。「次回作を楽しみにしてるよ」と彼女におやすみラインを送って僕は床に就いた。
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