あすなろコラム

~我がルーツ~ 2022.10.01
何を隠そう、私は海外に行くと、よく現地の人に間違われます。もちろん欧米系ではなくアジア限定なのは言うまでもありませんが、韓国、台湾、中国は当たり前、日焼けした時などはシンガポールでも間違われてしまったというエピソードを持つ国境なき多国籍人です。

まあ、大体のパターンは現地人に道を尋ねられるわけですが、私ひとりの時に限らず例えば日本人仲間と共に行動していても、グループ内の私と目が合うと「あっ、いたいた。日本人の中に我が祖国の人が。あの顔はきっと日本人じゃないわ」ってな具合で、何の迷いも疑いもなしに私のもとへやってきて現地の言葉でホニャラホニャラと話しかけてくるのです。

私はあせって出来る限りの身振り手振りを交えて日本人であることを相手に告げると「えっ?!ウソ???」みたいな顔をされる。もちろん見ていた私の仲間は大爆笑‥(涙)。信号待ちの交差点や空港や駅、レストランなど話しかけられる場所はまちまちですが、絶対にありえないような極めつけのエピソードをここで紹介しましょう。

それは、釜山ロッテホテルの外にある屋台に私を含めた日本人男性三人で行った時の出来事でした。今はどうだか知りませんが当時はホテルのまわりにたくさんの屋台が並んでおり博多の屋台に似た雰囲気を醸し出していたのです。小腹が空いた私たちは好奇心に身を任せてさっそくある屋台の暖簾をくぐり先客の若い韓国人カップルの左隣に私が座り、私の左隣にふたりの知人が座りました。その店の女将さんは何と日本語べらべらで、暫しの間、女将さんを交えて楽しいひと時を過ごしておりました。もちろん会話はぜんぶ日本語です。

すると、突然、何を思ったのでしょうか隣のカップルの男性が私に話しかけてきました。しかも言葉はハングル。あまりにもいきなり過ぎて何が起こったか分からず話しかけられた言葉も分からず、ぽかんとする私。そんな時が止まったような静けさを打破したのは女将さんです。話しかけてきた男性に二言三言。すると男性も二言三言。そして急にケラケラ笑い出す女将さんに「えーっ?!」という男性の驚く顔。訳が分からない私は事の真相を女将さんに尋ねます。すると女将さん曰く「あなたが韓国の人だと思ったってさ」「えっ何で?だって僕、ずっと日本語しか喋ってないけど‥」と納得いかない顔で反論すると再び笑いながら女将さん「そうよ、だからあなたを日本語ができる韓国人のツアコンと思ったんだって」

「どんだけ積極的な思い込みやねーん!」申し訳なさそうに謝る男性とゲラゲラと爆笑する知人。それを交互に見ていると当然怒る気にもなれず、それからというもの私たちは意気投合し決して忘れられない楽しい夜のひとときを過ごしたとさ。めでたしめでたし。

PS.屋台の〆はやっぱりラーメン、ということで注文すると女将さんが当たり前のように市販のカップラーメンにお湯を入れて出してくれました。(コンビニかっ!)
~静かなる勝利~ 2022.09.01
9回表、2アウト。あとひとり打ち取れば5年ぶりの甲子園。しかも点差は21対0なのでここまでくれば勝利は間違いない―。でも‥なぜだ?なぜ‥こんな試合になったんだ?相手は準決勝で強豪を破ったチームなのに‥。なぜだ?なぜ‥こんな大差がついたんだ?

衝撃的なニュースを監督から聞いたのは決勝戦の前日だった。「相手チームはチーム内にコロナ陽性や体調不良の選手が出てしまったため特別ルールにより12名の選手を急きょ入れ替えて明日の試合に臨むそうだ。つまりエースを含めほとんどのレギュラー選手がいないチームと我々は甲子園を賭けて戦うことになる‥」

「そ、そんな‥」我々選手一同は絶句した。監督は続けてこう告げる。「試合の延期は日程的に無理なので明日の試合は予定通り行うという県連の判断だから我々は従うしかない。もちろん相手チームだってそうだ。我々以上に延期を望んだに違いない。しかもこのチームは初の決勝進出だからなおさらだ。きっと悔しいだろう。悔しくて悔しくてたまらないはずだ。だったら君たちはどうする?」

「全力で戦います!決して手を抜きません!」エースの言葉に全員がうなずく。「そうだ、手を抜くのは相手に失礼だ。相手もそれを望まないし、きっと全力でぶつかってくるはずだ。勝ち負けのことは考えずにな。だったら君たちも全力で戦え。それが高校球児だ」

全力で9回まで戦い抜くことだけに両チームが集中した。そして最後のバッターを迎えたところでピッチャーからタイムがかかり選手がマウンドに集まった。「試合に勝ってもガッツポーズはなしだ。黙ってホームベースに整列しよう。それが相手チームへ俺らがやるべき最大の思いやりとリスペクトだ」エースの言葉はベンチにも伝わる。そしてゲームセット。総立ちの観客からは両校の選手に大きな拍手が送られ優勝したチームの監督は選手達の前で初めて男泣きした。それは選手自らの意思で相手に示した行動に感動したからだ。こうして両校はもちろん高校野球史に残る忘れられない試合は静かに幕を閉じたのだった。
~秘すれば花 黙するも花~ 2022.07.14
室町時代の能役者「世阿弥」の「風姿花伝」に“秘すれば花なり”と言う言葉があります。歴史の授業などで聞いたことがある方も多いと思いますが「秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず」(秘密にすれば花となり、秘密にしないと花にはならない)という意味です。

ここで言う「花」とは「野に咲く花」の外見の美しさのみならず黙って咲く奥ゆかしさや黙って散る潔さも含まれていると私は思います。さらに言えばそれは古来より日本人が美徳とした「我慢強さや辛抱強さ」、「遠慮深さや慎み深さ」そして何よりも「謙虚さ」につながる大切な心持ちや所作ではないでしょうか。

昭和を代表する日本映画の名作、山田洋次監督『男はつらいよ』‥と言っても平成生まれの方はほとんど知らないとは思いますが、この映画でこれまた昭和の名優「渥美清」が演ずる「フーテンの寅さん」の名ゼリフがこれです。

「それを言っちゃあ おしめえよ!」

そしてセリフはこう続きます。「何でも言いてえことを口にすりゃいいってもんじゃねえ。女は三界に家無し、男は外に出りゃ七人の敵。それぞれが抱えた不平不満を愚痴り罵り合ったって何の解決にもなんねえよ。いや、むしろ話がこじれるばっかりだ。だったら方法はひとつ。ただ黙って受け止めるこった。秘するも花、黙するも花だ。おめえみたいに言いたいことを言わないと気が済まないようじゃ夜泣きする赤子と同じだ。いつまで経ったって世間様からうっとうしがられるってことよ。何があっても何事もなかったように受け止められるようになってこそ本物の花になるってもんだ。秘するも黙するも花、おめえも“さくら”って花の名前なら黙って咲いて散ってみろ。わかったか!」


「みなまで言うな」という言葉もあるように、最後の言葉を言わずにぐっと堪えるのも大人の品格ではないかと自責の念を含め思うところです。

※文中の“さくら”とは『男はつらいよ』で共演の倍賞千恵子演ずる「諏訪さくら」のこと。
※寅さんのセリフ、「何でも・・」からに関しては実際の映画のセリフではありません。
~減点法ではなく加点法~ 2022.07.01
「ほめて みとめて はげまして」あなたの笑顔が保育の宝。

これが当園の掲げる保育及び教育理念です。そして「どの子も我が子のように接し根気強く粘り強く責任を持ってかかわる」ことを方針として日々の保育に努めています。これを別の言い方で表せば減点法の保育ではなく加点法の保育ということです。

具体的には減点法は持ち点が100点。加点法は持ち点が0点から毎日がスタートするわけです。まず朝、子どもが登園してからその子を見る保育者の視点が加点法の場合、“元気に挨拶が出来た”「すごーい!」“靴をちゃんと靴箱に入れた”「パーフェクト!」“先生のお手伝いをしてくれた”「エクセレント!」という具合にどんどんほめてあげる場面があり点数が増えてきます。

ここで大事なのは出来て当たり前と決して思わない事です。なぜなら「こんなこと出来て当たり前じゃない!」と思った瞬間から保育者の視点は減点法になってしまうからです。日常の些細なこと―出来て当たり前のこともちゃんと出来たら「えらいね~」とほめてもらうことを子ども達は何より求めていると私は思います。大好きなパパやママ、大好きな先生に“ほめてもらうこと”“みとめてもらうこと”“はげましてもらうこと”を求めているのです。

毎日が0点からスタートすれば昨日まで出来ていたことも今日出来たらプラス。ですからどんどん点数が増えていく。しかし100点からスタートすれば減ることはあっても増えることはないのです。

コップに水が半分入っていたとしたらこれをどう見るか。「もう半分も減っているじゃない」か「もう半分も入っているじゃない」か。コップの水同様に子どもへの視点が減点法か加点法か、プラス思考かマイナス思考かで保育は大きく変わると私は思います。
~いい塩梅~ 2022.06.01
幼い頃、川端通りにある川端ぜんざいを食した時、ぜんざいの甘さを引き立たせるには塩がいる。ということをはじめて知りました。
それから月日は流れ、川端ぜんざいのことをふと思い出したのは「いい塩梅」という言葉を聞いた時でした。

「あんばい」は元来、按排と書くのが正式みたいですが、私は塩梅と書いたほうがしっくりきます。そして「いい塩梅」とは、塩のさじ加減がいい、転じて「いい加減」ということになります。ちなみにこの「いい加減」、現代では、頼りない、無責任という悪い意味で使われますが、古くは「加減がちょうどいい」という意味で使われたらしいのです。

さて、ここからが本題ですが、「いい塩梅」とは何も「食」にとどまることなく、あらゆる場面で必要なさじ加減だと思います。例えば、子どもと接する時の言葉遣い、甘すぎてもダメ、辛すぎてもダメ。程よい加減でメリハリを付けて接することが出来れば、親子関係はきっとうまくいくと思います。

しかし、このさじ加減が一番難しい訳でして(汗)どうしても甘すぎたり、辛すぎたり、中には、甘からず、辛からず、そして、ウマからず・・何てこともままありますよね。(苦笑)

さじ加減が大事とわかっていても、ついつい可愛さのあまり、流されてしまったり、感情の先走りから、叱りすぎたりの毎日。でも、その中から「いい塩梅」が生まれるとするならば、それはそれでよし。ぜんざいの塩ように辛さが甘さを引き出すこともある。

大事なことは、マニュアルやレシピからだけではなく、自らの経験の積み重ねによって得られた味付けが「ええ~塩梅やなぁ~」となるような絶妙のさじ加減を見出すことなのです。
あすなろ幼稚園
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