あすなろコラム

~春はそこまで~ 2017.03.01
国境の長いトンネルを抜けると雪国だった。
これは、ご存知の通り、川端康成の小説「雪国」の有名なフレーズです。

先般、上越新幹線「ときMAX」で東京から新潟へ行く機会がありました。東京の空は雲一つなく、車窓から差し込む日差しが、とても眩しいほどの快晴でした。あっという間に、上野駅、大宮駅を過ぎ、群馬県の高崎駅に停車した際も見渡す限りの青空で、穏やかな天候に変わりはなく、車内で読書に耽っていた私も、ついウトウトと眠ってしまいました。

気が付くと「間もなく越後湯沢駅に到着します」という車内アナウンス。窓の外に目を向けるとちょうど長いトンネルに差し掛かったらしく真っ暗の窓が鏡となり静かな車内を映し出していました。その静かな車内にどよめきが起こったのは、列車がトンネルを抜けた瞬間でした。
 
高崎駅を出てわずか30分足らずで、この景色の変化。まさに小説の世界、そのものでした。そしてこの時、私は思いました。「雪は白でよかったなぁ~」「もし、雪が黒だったら雪国の人は大変だろうなぁ・・」
 
「汚れっちまった悲しみに 今日も小雪の降りかかる」という詩がありますが、苦しみも悲しみも心に降る純白の雪が覆い尽くしてくれる。そして、やがて訪れる春を心待ちにする。春になれば、雪解け水が嫌なことを洗い流してくれる。そう、春はもう、すぐそこまで。
~いいとこ見つけた~ 2017.02.01
人のいいところを見て好きになり、悪いところを見て嫌いになる。
ごく当たり前のことですが、人間関係とはそういうものですね。

しかし、こう考えたことはありませんか。もし、もう少し相手のいいところを見つける努力をすれば、もっと人が好きになれる。

誰にでも長所や短所を持ち合わせています。何の取柄も無い人はいないと信じたいものです。現に皆さんも「何となく嫌だなあ・・・」と感じている人のいいところを思いがけず発見して「意外といい人じゃない!」と思い直した経験はありませんか。

例えば100円玉を上から見たり、斜めから見たり、縦に見たりするとすべてカタチは違いますが、どこから見ても100円であることには変わりありません。いつも同じところばかり見るのではなく、見方を変えてみれば今まで気づかなかったことに気づくこともあるのではないでしょうか。

誰とでも仲良くできる人や誰からも好かれる人は、人のいいところを見る目が優れているのでしょうね。「おやっ?」と思ったら見方を変えてみる。そんな付き合い方ができる人のまわりには自然と人が集まってくるような気がします。日々の保育の中で先生が子どもを見つめるまなざしも同じようなことが言えますよね。

子どもが好きだからこの仕事にあこがれて幼稚園の先生になった。だからこの園の子ども達がみんな大好き。でも、それだけではダメ。すべての子ども達から好かれる先生でなければ。そんな先生のまわりには、いつも子どもたちの笑顔があふれている。子どもに好かれる先生、時には叱ることもあるけど、子どもに信頼される先生。それは子どものいいところをたくさん見つけられる先生なのです。
~新しい年~ 2017.01.01
明けましておめでとうございます。2017年の幕開けですね。さて、今年はどんな年になるのかと、期待と不安が入り混じった気持ちで仕事始めを迎えられた方も多いと思います。

一寸先は闇と言われるように未来のことは、なかなか予測ができません。ただ、良いことも悪いことも含めて、去年にはなかった新しい出来事が起こるから新年というのではないか・・。新年とは、単に過去から未来への時の流れを言うのではない。と、私は思います。

であるならば、今まで知らなかった事や、経験したことのない新しい出来事に順応していく心と体のしなやかさ、知恵や工夫が求められます。去年もこうだったから今年もこれでいい。毎年、判で押したような生き方ではいつか時代に取り残され、気づいた時にはもう手遅れだった。そのような見地に立った論文がイギリスのオックスフォード大学から発表されました。

それは、コンピューターのすさまじい技術革新により、将来、人間が行う仕事の約半分が機械に奪われる。例えば、金融業や物流業、技術者やオペレーター、そして、サービス業に至るまで多岐にわたる職業で人間が不要になる。と言うのです。今やオセロもチェスも将棋も囲碁も、それぞれの道の名人達が、AIと呼ばれる人工知能に敗北する時代なのです。

新しい年には必ず新しい出来事が起こる。その積み重ねが新しい時代を創造する。ですから身の回りで起きる変化に気づくか気づかないか。ほんの僅かなシグナルを見逃さずにいれるかどうかが肝要です。なぜなら、過去や現在がいくら良くても、それは決して未来を保障するものではないのですから。

乳幼児を取り巻く環境もそうです。子ども子育て支援新制度が施行されて3年目を迎える今年。
これから5年、10年を見据えて園の在り方を考え、変化に対応していくための準備は決して怠ってはならないとあらためて肝に銘じた新年です。今年もよろしくお願いいたします。
~すべてのことの意味~ 2016.12.18
今年も残すところあと10日程となりました。あっという間の一年でしたが、振り返れば、いろんなことがあった2016年でした。

毎年、その年を象徴する漢字一字が、世界遺産である京都、清水寺で揮毫されますが、今年は「金」という字が選ばれました。何といっても、リオ五輪での日本選手団の活躍によるものだと思いますが、政治とカネの癒着も選ばれた理由になったそうです。

そして今、あらためて思うのは、漢字に意味があるように、すべてのことに意味がある。ということです。例えば、オリンピック選手の活躍は、2020年の東京オリンピックへの大いなる期待につながり、甚大な被害を生んだ熊本大地震では、もはや日本において地震が発生しない場所はない。と知らされました。

「人間は学習して育つ」とすれば、自分の身の回りで起こるすべてのこと、嬉しかったことや楽しかったこと、苦しかったことや悲しかったことの意味を知ることが学習するということになるのでしょう。

昨年の増刊号に書いたJ1に昇格したアビスパ福岡もたった一年でJ2に降格、加えて11.5ゲーム差をひっくり返されてV逸した福岡ソフトバンクホークスにも、そうなってしまった意味が必ずある。それを学習することができれば来年は期待できるのかも知れませんね。幼稚園でもいろんなことがあった一年でしたが無意味なことはひとつもない。すべての出来事の意味を理解して来年につなげていけたらと思います。
~英雄の存在~ 2016.12.01
「光陰矢のごとし」の言葉どおり、早いもので、今年もあと、ひと月で幕引きとなります。この一年を振り返ると、日本はもちろん海外でもいろんな事がありましたね。イギリスのEU離脱には驚かされましたが、アメリカの大統領選のトランプ氏圧勝には、それ以上の衝撃でした。そして最近では、韓国の大統領への国民の厳しい追及などなど・・。

アメリカの大統領選もそうですが、韓国の朴大統領への厳しい追及を見ていて、私は人々が求める「英雄」について、あらためて考えさせられました。ちなみに、英雄とは「ひでお」ではなく、英語で言う「ヒーロー」の話であって、決して「村田だっ!」の村田英雄さんの話ではありませんので、お間違いなきようお願いいたします。

英雄は満ち足りた生活が保障された平和な時代に誕生することはありません。世の中が混沌として、何をしてもうまくいかないという閉塞感や挫折感が蔓延して、まさに出口が見えないトンネル状態。そんな中、人々の不安や不満を受け止め、改革を訴える存在が現れるとするならば、その存在こそが、世の中を救う救世主、変革のリーダーとなり、英雄伝説が始まるのです。

そして今、日本でも戦後の列島改造論を唱え、日本経済成長をその強烈なキャラクターでけん引した田中角栄元首相の書籍が、にわかに売れているらしく、このことが、アメリカほどはないにしても安倍総理以上のリーダーを求めている兆候だとしたら、今の日本は不幸な国と言わざるを得ないかもしれません。なぜなら、不幸な時代ほど、英雄を必要とする。言い換えれば「英雄が必要な時代は不幸である」という定説は世界中の歴史が物語っているからです。

子ども達にとって、ヒーローや英雄は、いつの時代もあこがれの存在であり、いろんなキャラクターがバーチャルな存在として、子ども達に夢や希望を与えています。「大きくなったら仮面ライダーになりたい!」子どもの夢としては、大いに結構ですし、有名なプロスポーツ選手にあこがれるのもいいでしょう。しかし、大人が望むヒーロー、特に政治の世界にそれを求める世の中にはなってほしくないものです。
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