園長の本棚

「親父とお袋」
2022.04.23
~親父とお袋~

何を隠そう僕の親父はハゲだ。僕が物心ついた頃から徐々に髪型が変わっていき、髪がない今となっては髪型と言うより頭のカタチと言った方がしっくりくる。(髪型ではなく頭型?)それでも「昔は紅顔の美青年で、そんな俺に母さんは惚れたんだ」と豪語するのはいいが、お袋に言わせると「すっかり騙されたのよ、これは一種の詐欺ね」とにべもないコメント。〈父‥自爆〉しかし、親父も負けてない。「別にハゲたのは俺のせいでも何でもない、詐欺呼ばわりするならお前だって‥若い頃よりずいぶん体型が‥」「何ですって!」「だから髪は体重と違って抗えない不可抗力‥」親父やばい‥。「カーン!」BGM-ダーン!ダダダーッ!ダーン!ダダダダーン!―。ついに髪型VS体型の戦いの火ぶたが切られた。すかさず僕はタオルを投げる〈父‥秒でTKO〉

そうして体重差10キロ以上ある無差別級の戦いはあっけなく幕引きとなったが、僕はこんな父と母が大好きだ。毎日の会話がおもしろすぎて飽きない。時々夫婦漫才でデビューしたらいいのに-と思うこともある。

ある日曜の午後、コーヒーが飲みたくなり、1階に降りるとリビングでお袋が昼寝をしていた。そこへ親父がちょうどゴルフから帰宅。こんな時は何となく‥いや、とっても悪い予感しかしない。同時にそれはワクワクするほどの胸騒ぎでもある。

大声で「ただいま~」と親父。まるで状況が読めていない。てか、間が悪すぎ。「うるさいわね‥」とお袋。「うるさいって、帰ってきたら、ただいまだろ!」と親父。「‥‥‥」完全無視のお袋、完全無敵である。「ここは青森か?」負けじと親父。「なんで?」と余計なフリを入れる僕。「いや、祭りかと思ってな‥」親父。「青森の‥祭り?」あおる僕。「我が家は青森まで行かなくても“ねぶた”が見物できるんだなあ」と親父。しかも“ねぶた”の部分がフォルテシモ。「プルプルプル‥」地鳴り地響き。「やばい、だ、だ、大魔神だーっ!」逃げる父。しかし‥あえなく御用。〈再び‥KO〉

こんなお袋だが、親父が風邪を引いて寝込んだ時などは、つきっきりで甲斐甲斐しく世話を焼く。それが出来るぐらいなら普段から‥と思うのは野暮な話で、喧嘩するほど仲がいいと言うし、父と母は喧嘩できるほどの仲良しなのだ。しかもその言葉の攻防には悪意がなくユーモアにあふれている。ふたりにとっての喧嘩はお互いの味を引き立てるスパイスなのかも知れない。

「お父さん、冷えピタ交換しますよ」「す、すまん‥」「ところでさ‥お父さんのオデコって‥どこまでなの?境目がわからないから、マジックで線でも引こうかしら」(おのれぇ‥)「母さん‥俺、さっき変な夢を見た。洗面所で直立不動のカバが黙とうしててな‥。よ~く見ると、お前が体重計にのっ‥」「バシっ!」「痛てっ‥、俺は病人だぞ」「あら~ごめんなさ~い、蚊がいたのよ。やっぱり虫は光るものに集まるのかしらね」「いや、近くにカバがいるからじゃないか‥」「バシっ!バシっ!」親父とお袋、やっぱりおもろい夫婦だ。
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